優れたアブストラクトの書き方:第一印象を良くする6つのコツ

  • アブストラクト(抄録)は研究論文の非常に大切な要素です。
  • 以下の6つのアドバイスを参考に、少ないスペースを最大限に活用しましょう。
  • 明確な結論を述べる一方で、自分の研究を過度に宣伝することは避けましょう。

最終更新日:2023年8月23日

a researcher writing an abstract for a research paper

アブストラクト(抄録)は、いくつかの理由から、おそらく原稿の中で最も重要なセクションです。まず、アブストラクトは、ジャーナル編集者が原稿を査読に出すかどうかを決定する際に、最初に読まれるセクションです。同様に、論文が出版された後も読者が最初に読むセクションであり、このセクションだけしか読まれない場合も多くあります。これは、ほとんどの文献データベースに収載されている内容が抄録のみで、全文記事へのアクセスが制限されていることが多いためでもあります。

このように、アブストラクトは研究の最も重要な面を強調しながら、研究を簡潔に伝えるツールとして登場します。以下の記事では、あなたの研究に最大限の注目を集める、優れたアブストラクトの書き方について説明します。

1. 論文を先に書く

著者の中には、研究が完了したらすぐにアブストラクトを書くべきだと言う人もいます。しかし、あなたのプロジェクトは数ヶ月、あるいは数年に及んでいる可能性が高く、あなたが達成したことの全体像が記憶に新しいとは限りません。最初に論文を書くことで、この問題が解決され、研究の全側面が1つの文書に凝縮されるため、記憶を効果的にリフレッシュすることができます。原稿はその後、研究の簡潔な要約であるアブストラクトを書くためのガイドとなります。

何から書き始めればいいのか分からない場合は、論文に目を通し、各セクション(序論、方法、結果、考察/結論)で最も重要な文章にハイライトを付けることを考えましょう。そして、これらの文章をアウトラインにしてアブストラクトを書きましょう。この時点で、目標とするジャーナルのスタイルガイドをチェックし、アブストラクトのガイドラインを調べることも重要です。例えば、ジャーナルによっては、個別のセクションで構成されたアブストラクトを要求していたり、ほとんどのジャーナルが厳しい語数制限を課していたりします。

2. 趣旨説明につながる導入的な背景情報を提供する

アブストラクトの最初のセクションは、非常に重要です。この1~3文で、なぜこの研究を行ったのかを読者に伝えなければなりません。

例えば、"The importance of epistasis¬-non-additive interactions between alleles in shaping population fitness, has long been a controversial topic, partly by lack of empirical evidence(遺伝子の相互作用であるエピスタシスが集団の適応度に与える影響は長らく議論の的であり、実証的な証拠が不足しているため一部で問題視されてきた)"1という導入文は、主なトピック(エピスタシスの集団の適応度への影響)を述べると同時に、問題点(この分野における実証的な証拠の欠如)を説明する優れた一例です。従って、読者の注意を即座に引くことができます。次の文章では、どのような情報がこの分野で不足しているか、または以前の研究者がどのようにして問題に取り組んだかを説明することでしょう。

このような記述は、あなたの研究がどのようにしてその問題に取り組むかを自然に示すものです。「Here, we aimed to...」や「Here, we demonstrate that...」のような導入部のフレーズを使うことで、読者に研究の目的や目標を述べていることが伝わります。

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3. 方法論を簡潔に述べる

アブストラクトの方法論セクションは、研究の基本的な設計を要約する機会です。過剰な詳細は不要ですが、使用した主要な技術を簡単に述べるべきです。生物学や臨床分野の要約では、研究対象の生物、細胞株、または集団を言及することが重要です。生態学の論文では、研究の場所はしばしば重要な情報です。臨床試験を説明する論文では、サンプルサイズ、患者グループ、投与量、研究期間を言及すべきです。以下の例では、これらの情報を一文で簡潔明瞭にまとめています: “One hundred consecutive consenting male inpatients in a state of moderately severe, uncomplicated alcohol withdrawal at screening were randomized to receive either lorazepam (8 mg/day) or chlordiazepoxide (80 mg/day) with dosing down-titrated to zero in a fixed-dose schedule across 8 treatment days. (スクリーニング時に中等度の重症で合併症のないアルコール離脱状態にある連続した同意男性入院患者100人を、ロラゼパム(8mg/日)またはクロルジアゼポキシド(80mg/日)を投与する群に無作為に割り付け、8日間にわたる固定用量スケジュールで投与量をゼロに減量した。)”2

4. 最も重要な研究結果を明確に記述する

アブストラクトは論文の中で最も重要な部分かもしれませんが、その中でも結果のセクションがおそらくアブストラクト内で最も重要な部分です。なぜなら、読者があなたのアブストラクトを読む主な理由は、あなたの研究結果について知りたいからです。したがって、結果のセクションはアブストラクトの中で最も長い部分であり、ここに含める詳細の量を最大限にすることを心がけるべきです。

たとえば、“significant differences in body weight were observed between the animals in groups A and B (A群とB群の動物間で体重に有意差が認められた)"といった表現はあまり具体的ではありません。代わりに、“the average body weight loss of the animals in group A was greater than that of the animals in group B (20.4±0.3 g vs. 8.4±0.6 g; p<0.01) (A群の動物の平均体重減少はB群の動物のそれよりも大きかった(20.4±0.3 g対8.4±0.6 g、p<0.01))"といった具体的な記述を検討してみてください。p値は、差が有意であったことを効果的に伝えているため、「有意」の言葉はもはや必要ありません。

5. 結論は完結に述べ、誇張を避ける

アブストラクトの最後の1~2文は、研究の全体的な持ち帰りメッセージ、つまり結論に充てましょう。このセクションは、"Our study revealed that... "や "Overall, we conclude that... "のようなフレーズで始めるのがよいでしょう。そして、主な所見をできるだけ簡潔に述べます。他に興味深い副次的所見があれば、それらについても言及します。最後に、あなたの研究の理論的または実践的な意義を示す文を含めることを検討してください。または、あなたの研究がどのようにこの分野を発展させたかを説明する一文を入れることも検討してください。そうすることで、読者はあなたの研究結果の重要性をより明確に理解することができます。

先に述べたように、原稿の全文にアクセスできない読者の多くは、アブストラクトだけを読み、データにアクセスできなければ、あなたの結論を額面通りに受け取らざるを得ません。このため、読者に誤解を与えないよう、アブストラクトでは結論を誇張しすぎないことが非常に重要です。

6. アブストラクトで避けるべきこと

アブストラクトは研究の要約であるため、通常は厳しい字数制限があります。研究の最も重要な側面をすべて250語以内の段落にまとめるのは、難しい作業です。しかし、アブストラクトを書く際に避けるべきことを知れば、少しは楽になります。

例えば、アブストラクトには次のような内容を含めるべきではありません:

  • 長い背景情報(読者は、他の研究者の過去の研究ではなく、あなたの現在の研究について知るためにアブストラクトを読みます)
  • 引用
  • ルーチン的な実験手順の詳細
  • 使用した統計手法やソフトウェアの詳細(これが研究の焦点である場合を除きます)
  • 定義されていない略語や頭字語(ほとんどのジャーナルは、定義する必要のない一般的な略語/頭字語のリストを提供しています。ジャーナルによっては、要約での略語/頭字語の使用を許可していない場合があります)
  • 本文で議論されていない結果や解釈

アブストラクトが完成したら、ここに記載したすべての情報が論文本文の情報と一致しているかをチェックすることが重要です。長い間取り組んでいると、自分のアブストラクトが明確かどうかを客観的に評価するのが難しくなることがあります。

別の分野で研究している同僚にアブストラクトを渡し、読んでもらうことを考えましょう。同僚に、アブストラクトだけで研究が明確かどうかを尋ねてみましょう。そうすることで、意味を明確にしたり、主要な発見をより強調するためにアブストラクトのどの部分を修正する必要があるかを判断することができます。

その他考慮すべきこと

キーワードの特定

キーワードは、アブストラクトだけでなく、論文全体を検索させるためにも重要です。ジャーナルの論文内に見つかるキーワードを取り入れて、検索エンジンがそれらを発見できるようにしましょう。

アブストラクトの種類

アブストラクトの種類は出版物によって異なります。抄録を書く前に、必ず投稿規定に目を通しましょう。以下に、記述型アブストラクトと情報提供型アブストラクトの2種類のアブストラクトについて説明します。

記述型アブストラクト

記述型アブストラクトは、よりアウトラインに近い役割を果たします。記述型アブストラクトは通常、要点と発見を短くまとめたものです。通常、100語前後の一つの段落です。

情報提供型アブストラクト

情報提供型アブストラクトは、記述型アブストラクトよりも詳細に述べます。優れた情報提供型アブストラクトは、主な発見の詳細な要約として機能します。記述型アブストラクトを超え、より全体的なストーリーを伝えます。

Tips for writing a good abstract

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著者リソース英文校正フォーマット調整執筆と翻訳抄録論文の書き方
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