学術論文でのet al.の使い方(具体例)

「et al.」という略語は、学術書において、引用や参考文献で複数の著者(または編集者などの他の貢献者)を示すために用いられます。et alia (または男性と女性の複数形 et alii または et aliae) の略です。

最終更新日:2022年6月8日

学術論文でのet al.の使い方(具体例)

学術論文の引用ルールには、必ずと言っていいほど変わった用語が出てきます。英語ではないものもあれば、単語ですらないものもあります。例えば、 et al. は英語ではありません。とりわけラテン語に由来しない日本語を話す人にとっては、どのように使えばいいのか混乱することでしょう。この記事では、 et al. の使い方と、これに関したよくある間違いについて解説します。

「et al.」という略語は、学術書において、引用や参考文献で複数の著者(または編集者などの他の貢献者)を示すために用いられます。et alia (または男性と女性の複数形 et alii または et aliae) の略です。ラテン語で「その他」を意味します。一般的には、3人以上の著者がいる出版物を引用する際に使用します。例えば、文中引用で (Schouten, McAlexander, Smith, Rogers, & Koenig 2010)と記す代わりに、単に(Schouten et al. 2010)と表記します。また、この略語は文章を読みやすくし、読者が引用された著作物をより早く見つけるのに役立ちます。現代の科学文章は、読みやすく理解しやすいものであるべきで、その点からみても、これは有益な書き方です。

経験豊富な著者でさえ、 et al. の使い方に悩みます。なぜなら、多くの主要な学術論文のスタイルガイドや特定のジャーナルでは使い方が微妙に異なるからです。ここでは、科学論文を投稿しようとするときによく目にする典型的なスタイルを見てみましょう。これらのスタイルの中には、しばしば更新されるものもあるので、必ず教授に確認するか、対象となる投稿ガイドラインを確認するようにしましょう。

主要な出版参照スタイルで et al.を使用する

以下では、APA、MLA、Vancouver などの主な参照スタイル、特にジャーナルに見られる et al. の使い方を紹介します。

APA (American Psychological Association) Style

APA は社会科学や医学の分野では、大学や出版物でも通例的に使用されています。APAスタイルでの文中引用では、著者が2人の場合は、両方の著者の姓を表記し、その後に発行年を記載します。著者が3人以上の場合は、第一著者名の後に et al. を記して引用します。

これらの規則は Publication Manual of the American Psychological Association, Seventh Edition (APA 7版).に基づいていることに注意してください。以前のバージョンでは、文中引用でより多くの著者を表記する必要があり、また、参考文献一覧の要件にもいくつかの違いがありました。

APAスタイルでの文中引用

APA方式での文中引用の主な違いは、&記号、またはアンパサンドの使用です。et al.は、現在では単に3人以上の著者の場合に使用されています。以前は、最初の参照では最大5人までの著者を表記して、2番目の参照には et al. を表記していたため、より混乱していました。多くの人は現在のスタイルに慣れていないでしょうから、必ず確認してください。

APA chart
APA スタイルでの参考文献一覧

et al. の略語は、APAの参考文献一覧では使われません。しかし、参考文献一覧の作成方法を知っていれば、文中引用でいつ et al. を使うべきかが理解できます。

著者数が3~20人の出版物の場合は、すべての著者を表記します。以下がその例です。

Eckhardt, G., Houston, M., Jiang, B., Lamberton, C., Rindfleisch, A., & Zervas, G. (2019). Marketing in the sharing economy. Journal of Marketing, 83(5), 5-27.

20人以上の著者がいる出典の場合は、最初の6人の著者名の後に省略記号(…)をつけて、最終著者名を表記します。以下がその例です。

Pegion, K., Kirtman, B. P., Becker, E., Collins, D. C., LaJoie, E., Burgman, R., . . . Kim, H. (2019). The subseasonal experiment (SubX): A multimodel subseasonal prediction experiment. Bulletin of the American Meteorological Society, 100(10), 2043-2061.

APA方式はスペースやカンマのルールがかなり細かいので、気をつけましょう。

MLA (Modern Language Association) Style

MLA スタイル は人文科学分野で最も一般的に使われている方式です。

MLA での文中引用

APAスタイルとは異なり、MLAスタイルでは発行年を用いません。その代わりに、著者の姓と引用ページの番号を表記します。

著者が3人以上の場合は、文中引用と参考文献一覧の両方に et al. を使用します。

MLA chart
MLA スタイルでの参考文献一覧

MLA方式でWorks Citedリストとして知られる参考文献一覧の方式は、3人以上の著者がいる出版物では、最初の著者の「姓」、「名」のあとにet al.を入れます。こちらがその例です。

Wysocki, Anne Frances, et al. Writing New Media: Theory and Applications for Expanding the Teaching of Composition. Utah State University Press, 2004.

Vancouver Style

Vancouverスタイルガイドは、カナダで International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE)によって開発されました。現在では医学、保健科学、生命科学、さらにはテクノロジーの分野でもジャーナルの参照に広く使われています。簡潔な方式で、ハイパーリンクや EndNote などの参照ソフトとの相性が良いのが特徴です。

Vancouver スタイルでの文中引用

Vancouver方式では、文中引用には数字を使用しますので、et al. を使用しても問題ありません。ただし、一文中に著者名が表記されている場合は、複数の著者がいる出版物には et al. を使用してください。こちらがその例です。

“Holt et al.[1] found that there was no histochemical evidence of mitochondrial myopathy.”

Vancouver スタイルでの参考文献一覧

参考文献一覧では、6人までの著者名を表記します。こちらがその例です。

Holt IJ, Miller DH, Harding AE. Genetic heterogeneity and mitochondrial DNA heteroplasmy in Leber's hereditary optic neuropathy. J Med Genet. 1989 Dec; 26 (12): 739-743.

7人以上の著者の場合は、最初の6人と et al. を書きます。こちらがその例です。

Meakin CJ, King DA, White J, Scott JM, Handley H, Griffiths A, et al. Screening for depression in the medically ill. J Nerv Ment Dis 1991; 12: 45‐53.

AMA (American Medical Association) Style

また、医学分野で非常に一般的な参照方法がAMAスタイルです。厳密に言えば、臨床医学ジャーナルや生命科学分野でAMAスタイルが使用される傾向にあります。

AMAスタイルでの文中引用と参考文献一覧

AMA方式は、文中引用にも番号を使用している点でVancouver方式と似ています。AMAの違うところは、参考文献一覧に7人以上の著者がいる出版物の扱い方にあります。

AMAでは、6人までの著者については、すべての著者の名前を表記します。こちらがその例です。

Mizumoto K, Kagaya K, Zarebski A, Chowell G. Estimating the asymptomatic proportion of coronavirus disease 2019 (COVID-19) cases on board the Diamond Princess cruise ship, Yokohama, Japan, 2020. Euro Surveill. 2020;25(10):2000180.

7人以上の著者の場合には、初めの3人を表記して、続けて et al. を書きます。こちらがその例です。

Ahn DG, Shin HJ, Kim MH, et al. Current Status of Epidemiology, Diagnosis, Therapeutics, and Vaccines for Novel Coronavirus Disease 2019 (COVID-19). J Microbiol Biotechnol. 2020;30(3):313-324.

Chicago/Turabian Style

Chicago方式(または、これにとてもよく似たTurabianスタイル)は、ジャーナリズムのみならず、社会科学や人文科学の本でも広く使われているアメリカ英語のスタイルガイドです。ジャーナルではあまり一般的ではありません。

The Chicago Manual of Style (CMOS)と呼ばれる包括的でどっしりと重い書籍には、著者名と日付、そして注釈と文献目録の2つの参照方式が示されています。

Chicagoスタイルの文中引用

et al. の使用は、上記ふたつの参照方式でも同じです。文中引用の場合は、著者が3人までの場合はすべて姓を表記します。著者が4人以上の場合は、最初の著者名に続いて et al. を書きます。脚注の場合は、著者名をフルネームで表記します。通常、Chicagoスタイルでは関連するページ番号も表記しますので注意してください。また、APAスタイルとは異なり、アンパサンド記号「&」の代わりに「and」が使われます。脚注は通常、本文中に上付き番号を付けて表記します。

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Chicagoスタイルでの参考文献一覧

Chicagoスタイルでの参考文献一覧は、出典の著者が10名以内の場合は、すべての著者をフルネームで表記します。こちらがその例です。

Sechzer, Jeri A., S. M. Pfaffilin, F. L. Denmark, A. Griffin, and S. J. Blumenthal, eds. Women and Mental Health. Baltimore: Johns Hopkins University Press, 1996.

著者が10人以上の場合は、初めの7人を表記して、続いて et al. を書きます。

Harvard Style

このスタイルガイドは、アメリカ留学経験者やアメリカの教授の下で勉強したことがある人には馴染みのあるものでしょう。高校生以上のレベルから一般的に使われています。科学的な出版物ではあまり一般的ではありません。

Harvard スタイルでの文中引用

Harvard方式での文中引用の場合、著者が3人以下の場合はすべての著者名を表記します。著者が4人以上の場合は et al. を使用します。さらに混乱させるのは、Harvardスタイルでは通常、著者名と著者名の間や et al. と発行年の間にカンマを入れません。

Harvard manual of style chart
Harvard スタイルでの参考文献一覧

Harvard方式での参考文献一覧の場合は、著者が何人いても全員の名前を表記します。こちらがその例です。

Lupien, S.J., McEwen, B.S., Gunnar, M.R. and Heim, C., 2009. Effects of stress throughout the lifespan on the brain, behaviour and cognition. Nature Reviews Neuroscience, 10(6), pp. 434-445.

Harvardスタイルは主に大学で使われている方式であり、大学によって独自のバリエーションがあることがあります。Harvardスタイルは大学や出版物によって、句読点や大文字表記にかなりのバリエーションがありますので、必ず確認しましょう。

特定のジャーナルにあるバリエーション

これほど数多くの参照スタイルがあるにもかかわらず、一部のジャーナルでは、独自の参照スタイルを好んで使用します。こういった方式のほとんどは100%独自のものではありません。ほとんどは人気のスタイルに、いくつかの変更を加えたものです。

最も多いのが、Vancouverスタイルにちょっとした変更を加えて、独自の “ハウス・スタイル “としているケースです(下のトピックを参照してください)。スペースを追加したり、句読点を変更したり、または、他では括弧やカギ括弧内で数字を表記するものを、上付き数字で表記するなどの変更を加えています。

例えば、人気のオンラインのオープンアクセスジャーナル(OA)であるPLOS ONEは、Vancouverスタイルを採用していると述べています。確かにそうなのですが、引用番号をカギ括弧の中に入れたり、参考文献一覧の句読点のスペースを削除したりしています。これらは小さな変更ですが、もし執筆者がこれらを正しく行わなければ、投稿先のジャーナルでリジェクトされるリスクがあるのです。

もう一つの例として、 *Transactions of the ASABE* などのジャーナルを制作しているAmerican Society of Agricultural and Biological Engineers (ASABE)では、APA Style 6th Editionのバリエーションを使用しています。なぜでしょう?私にはいっこうに分かりません。しかし、もしあなたがこのジャーナルに投稿するのであれば、彼らのガイドラインに従わなければなりません。

こういったややこしいガイドラインを満足させる論文にするためには、幾度となくこの作業をしてきたプロの科学編集者に依頼するのもひとつの方法です。私たちは、これらのスタイルのほんの小さな違いを見抜くことに長けています。なぜなら、それが私たちプロの仕事のうちだからです。

学術文章でのet al.の使い方でよくある間違い

et al.を使用するときには、注意すべき点がいくつかあります。

et al.を使うべきではないとき

et al.をどこで使うべきか、或いは使うべきでないかは、あなたが従うべきスタイルガイド次第です。本当にそれだけです。しかし、執筆者の中には、ふたり以上の著者がいる場合に、平易に et al. を使う人がいますが、これは誤りです。最近のAPAスタイルの更新では、また学生や投稿を目指している研究者たちを大いに混乱させました。 なぜなら、APA 7版に更新されたにもかかわらず、一部の教授やジャーナルの査読者はAPA 6版を引き続き採用しているからです。気にしない人もいるかもしれませんが、わからない場合は尋ねてみましょう。

et al. のピリオドの置き場所

et al.を使うときに最もよくある過ちは、ピリオドの置きかたかもしれません。ピリオドは “al. “の後に置くべきで、”et “の後に置いてはいけません。これは前述したように、et al.はラテン語のフレーズet aliaの省略形だからです。

et al. の後に他の句読点をつけることもできます。例えば:

(Aaker et al., 2004)

ただし出版物によっては、そうでない場合もあります。

et al.が文末の場合はピリオドを1つだけつけます。例えば:

“This leads to a 40% reduction in food waste, as shown by Simpson et al.”

et al. vs. etc.

et al. と etc. はしばしば混同されることがありますが、これらは全く別物です。著者(または他の貢献者)リストには et al. という略語を使います。簡単なことですね。しかし、etc.( et cetera はラテン語で「その他の類似したもの」、つまり「など」という意味です)はリストや関連するものに使います。こちらはその例です。

“Riches et al. (2017) suggest that subcultures form around a variety of popular music styles (punk, hip hop, etc.), each with its own aesthetics and ethos.”

et al.についてのまとめ

et al.を使う基本的な考え方は簡単ですが、それぞれのシステムが異なるのです。ジャーナル投稿の場合は、具体的な内容を確認しましょう。ジャーナルによっては、APAやVancouverのような一般的なスタイルを使用している場合もありますが、若干の変更が加えられている場合があります。ジャーナルによっては、この点に非常にうるさいところもあれば、そうでないところもあります。

あなたの原稿が正しいガイドラインに沿ったものであるか確認したい、またはガイドラインに従って正しくフォーマット化したいようでしたら、ぜひAJEにご相談ください。ジャーナルのガイドラインは風変わりなもので、英語が母国語でない人にはさらに難しいものです。プロにお任せください。喜んでお手伝いさせていただきます。

筆者について

筆者のAdam Goulston博士は米国生まれで,日本を拠点にマーケティングや執筆,編集に携わっています。Goulston博士が率いるScize Group合同会社は,グローバル志向の学術ビジネスや研究者たちが研究成果の価値を世界に向けて発信し,読者や顧客を獲得するのをサポートしています。また,Goulston博士が編集に携わった学術論文は3,000本以上に及びます。

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